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千葉地方裁判所 昭和45年(わ)443号 判決 1981年3月11日

被告人 平野靖識 外五〇名

主文

1  被告人平野靖識を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

2  被告人加瀬勉を懲役一年に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

3  被告人森本裕文を懲役一〇月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

4  被告人梅澤勘一を罰金一万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

5  被告人堀越光枝を罰金一万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

6  被告人中野龍夫を懲役一〇月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

7  被告人井原義輝を懲役八月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

8  被告人久保道典を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

9  被告人田村重喜を懲役一〇月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

10  被告人福井昌平を懲役八月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

11  被告人高橋克行を懲役八月に処する。

未決勾留日数中三〇日を右刑に算入する。

12  被告人鴨哲登志を懲役八月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

13  被告人石井重信を懲役八月に処する。

未決勾留日数中三〇日を右刑に算入する。

14  被告人石井出を懲役八月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

15  被告人生島誠を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

16  被告人北村充成を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

17  被告人富岡昭博を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

18  被告人櫻井清を懲役一〇月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

19  被告人森田悦司を懲役一年に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

20  被告人海沼栄造を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

21  被告人渡邊克夫を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

22  被告人下山久信を懲役一年に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

23  被告人岡野寛を懲役一年に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

24  被告人大河内信喜を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

25  被告人山下茂を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

26  被告人市川裕二を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

27  被告人奥山敬一を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

28  被告人相馬一洋を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

29  被告人清水建を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

30  被告人三田義樹を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

31  被告人歸山俊二を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

32  被告人高山道雄を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

33  被告人園田安男を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

34  被告人種石保廣を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

35  被告人黒田則武を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

36  被告人西谷俊太郎を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

37  被告人小沼正昭を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

38  被告人伊藤洋美を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

39  被告人菅野芳秀を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

40  被告人村田康秀を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

41  被告人北利雄を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

42  被告人森良を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

43  被告人多田和美を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

44  被告人川野學を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

45  被告人田村窿を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

46  被告人永田修を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

47  被告人安齋愼治を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

48  被告人岡村庫二を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

49  被告人青申一を懲役一年に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

50  被告人奥哲明を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から四年間右刑の執行を猶予する。

51  被告人梶川謙一を懲役一〇月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

52  訴訟費用は、別紙訴訟費用負担一覧表記載のとおり各被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人らは昭和四一年七月四日閣議において、新東京国際空港(以下新空港という。)が千葉県成田市三里塚を中心とする一帯の土地約一〇六五ヘクタールの用地に建設されることが決定されるや、間もなくこれに反対して結成された「三里塚・芝山連合空港反対同盟」と称する団体に属し又はこれを支援するもの(以下新空港建設反対派という。)であつて、新空港の用地買収交渉に応じないのみならず、いわゆる一坪地主運動を展開するなどして、新空港の建設を阻止しようとしていたものであるが、

第一  新東京国際空港公団(昭和四一年七月三〇日発足、以下空港公団という。)が昭和四六年三月に一部開港することを予定し、これに必要な四〇〇〇メートル滑走路及び同付随空港関連諸施設(いわゆる一期工事によつて建設する計画になつていたもの)の建設予定地内に存し、新空港建設反対派に属する農民らの所有にかかる土地について、土地収用法に基づく強制収用を企図し、昭和四四年一二月一六日建設大臣から事業認定処分を受け、翌昭和四五年二月一九日当該土地に関して立入調査を実施した後、同年三月三日同法三九条等に基づき千葉県収用委員会に対して右一期工事予定地内の一部に存する成田市駒井野字広田九四一番の五等六件六筆のいわゆる一坪運動共有地について権利取得裁決の申請及び明渡裁決の申立をなし、これを受理した同収用委員会により所定の手続を経たうえ同年九月一日、千葉市弁天三丁目一番一号所在の千葉県総合運動場体育館において第二回公開審理が開催されたところ、被告人平野靖識及び同加瀬勉は、土地所有者・関係人の代理人あるいは傍聴人等として右審理会場に入場し、同日午後五時少し前ころ、同審理会場内演壇上に設置された収用委員席に着席して審理開始の準備行為中であつた同収用委員会会長但馬弘衛並びに同収用委員会委員齋藤逸朗及び同田邊右門ら七名に対し、入場していた土地所有者・関係人らが、罵声を浴せるとともに同審理会場の整理等の業務に従事中の同収用委員会事務局長西内繁行ら職員の警告制止を無視して着席用椅子を右演壇直近まで移動するなどしたため、同日午後五時ころ、右但馬ら全収用委員において、審理の開始、進行等につき別室会議室に赴いて協議すべく立ち上つたところ、右土地所有者、関係人ら約三〇名が喊声をあげつつ同演壇上に駆け上り、右但馬、田邊、齋藤らを取り囲んでその各身体を押え、引つ張るなどの暴行を加えて混乱状態を呈するに至つた際、

一、被告人平野靖識は自らも右演壇上に駆け上り、同所において、

(一)、折から右但馬の救出及び右審理会場の整理等の業務に従事中の右収用委員会事務局職員鈴木重信の背後からその身体に抱きつき、あるいはこれを押える等の暴行を加え、もつて同人の右職務の執行を妨害し、

(二)、折から右齋藤の救出及び右審理会場の整理等の業務に従事中の右収用委員会事務局職員関藤吉の正面からその身体に抱きつき、あるいはこれを押えつける等の暴行を加え、もつて同人の右職務の執行を妨害し

二、被告人加瀬勉は、土地所有者・関係人ら約三〇名と共謀のうえ、同人らによつて右演壇下の床上に引き摺り下された右但馬弘衛を取り囲み、交々その身体を押え、引つ張り、足蹴りするとともに、被告人加瀬においても両手で右但馬の肩口あたりを掴んで前後にゆさぶつたりあるいは押えつける等の暴行を加え、もつて同人の右収用委員会会長としての職務の執行を妨害し

第二  前記空港公団が、前述のとおり、一期工事予定地内の土地につき強制収用のための手続を進めるとともに、その余の三、二〇〇メートル及び二、五〇〇メートルの各滑走路並びにこれらに付随する空港関連諸施設(いわゆる二期工事によつて建設する計画になつていたもの)の建設予定地内に存する新空港建設反対派所属の農民らの所有にかかる土地についても前同様強制収用によりこれを取得することとし、千葉県収用委員会に対して収用裁決の申請等をする準備として、昭和四五年九月三〇日から同年一〇月二日にかけて右二期工事予定地内の一部に存する成田市十余三地区等三一二筆の土地・物件について、土地収用法三五条に基づく立入調査を実施した際、

一、被告人中野龍夫は、右空港公団による立入調査を阻止しようと企て、前記新空港建設反対派約七〇名と共謀のうえ、同年九月三〇日午前八時一四分ころ同県山武郡芝山町大字岩山字鷹の巣下外数ヶ所の土地・物件について測量等の立入調査を実施するため右調査対象地付近の右同町大字岩山字五十石後二、〇一九番地先道路に立ち至つた同空港公団立入調査員坂田今朝彦らを認めるや、同時刻ころから同日午前九時五〇分ころまでの間、同所において、幅員約五メートルの同道路上一面に糞尿を撒布し、かつその道幅一杯に自動車の古タイヤ及び木枝を積み上げてこれを燃焼させ、更に同道路の道幅を越えて杉丸太や鉄線を利用して構築したバリケードの内側に右新空港建設反対派の者達と共に集結して立ち塞がつたうえ、右燃焼中の古タイヤ等に更に古タイヤ、木枝等を補給してその火勢を強めて車両等の通行を不能にするとともに、右空港公団立入調査員に対し「帰れ」などと怒声を浴せるなどして同人らの右調査対象地への立入りを不能ならしめ、もつて陸路を壅塞して往来の妨害を生じさせるとともに、威力を用いて同空港公団の右立入調査業務を妨害し

二、被告人森本裕文は、右空港公団による立入調査を阻止しようと企て、前記新空港建設反対派の学生ら一〇余名と共謀のうえ、同年一〇月一日午前七時一〇分ころ、成田市大字十余三字天神峰一六四番地の一三外数ヶ所の土地・物件について測量等の立入測量を実施するため同市大字十余三字天神峰二一四番地の六五付近に立ち至つた同空港公団立入調査員林千春らを認めるや、同時刻ころから同日午前八時ころまでの間同所において、右林らの進路に立ち塞がり、同人らに対し、交々「公団帰れ。この馬鹿野郎。」などと怒号しつつ各自所携の角材、竹槍、竹竿などを突きつけ、あるいは振り上げて威迫したうえ、同空港公団立入調査員によつて掲示中の「立入り調査を妨害しないで下さい」旨記載された字幕(昭和五〇年押第二七〇号の三)を角材で突き破るなどし、更に被告人森本においても燃焼中の自動車の古タイヤを角材などで持ち上げ、これを右林らに向けて投げつけるなどして同人らの右調査対象地域へ立入つてする調査活動を不能ならしめ、もつて威力を用いて同空港公団の右立入調査業務を妨害し

三、被告人梅澤勘一は、前同日午後一時五五分ころ、成田市東峰字笠峰六四番地の三付近畑において、同空港公団立入調査員石田洋夫の横柄な応接の態度に憤激し、その顔面あたりに所携の糞尿入ビニール袋一個(昭和五〇年押第二九四号の一)を投げつける暴行を加え

四、被告人堀越光枝(旧姓石井)は、前同日午後三時〇七分ころ、成田市東峰字笠峰七九番地の一付近畑において、同空港公団立入調査員栗原和興、同藤沢秀作、同山本博雄の三名に対し、右立入調査に対する抗議の意思で、所携の糞尿入ビニール袋二個を次々と投げつける暴行を加え

第三  被告人井原義輝は、昭和四六年二月一四日千葉市内で行なわれたいわゆる二・一四集会実行委員会主催による新空港の建設に反対し、土地強制収用に対する抗議の意思を表明するための示威行進に、外多数の者とともに参加した際、同日午後三時四三分ころ同市都町七〇六番地千葉県勤労青少年ホーム前交差点に差しかかるや外百数十名と共謀のうえ、予め同県公安委員会に届出てあつた示威行進の予定進路を無断で変更して同交差点を右折東進し、折から同所付近路上において同県知事公館に対する違法行為の発生に備えて警戒警備中の同県警察本部警備部機動隊石渡連隊所属の多数の警察官らに対し、腰を低く構えたまま一団となつて駆け足で体当りするなどの暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

第四  前記空港公団が、昭和四五年一二月二六日千葉県収用委員会より前記一坪運動共有地である成田市駒井野字広田九四一番の五等六件六筆の土地について、権利取得の時期及び明渡の期限をいずれも昭和四六年一月三一日とする収用裁決を得、これに基づき土地収用法所定の手続を執つたものの、土地所有者、関係人らから当該土地の引渡等の履行を受けられなかつたため、昭和四六年二月一日同法一〇二条の二に基づき、当該土地の引渡及び物件の移転について千葉県知事友納武人に対し代執行の請求をなすに至り、これを受けた同知事において直ちに行政代執行法所定の手続を経て同年二月二二日から同年三月六日にかけて代執行を実施することを決定するとともに、代執行実施班を編成し、且つ同空港公団に代執行作業を委託して準備を整え、同年二月二二日から同空港公団内に編成された右代執行実施班に対応する代執行実施作業班とともに順次代執行に着手したところ、これに対抗して新空港建設反対派の農民及び学生らも右代執行を実力で妨害阻止すべく、各代執行対象地毎に小屋あるいは矢倉等を築造し、その周囲に丸太材や有刺鉄線等を利用して強固なバリケードを築きあげてこれを砦となし、その内部に石塊、竹槍等を運び込んで準備したうえ、新空港建設反対派の学生らを中心に同所内に泊り込みを続けて代執行に備えて待機し、代執行が開始されるやこれに対して連日激しい実力による妨害阻止行動に出ていた際、

一、被告人久保道典は、外多数の学生らと共謀のうえ、

(一)、右代執行に際し、発生が予想された違法行為の規制、検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長本庄務指揮にかかる関東管区機動隊杢谷大隊所属の多数の警察官らの生命・身体などに対し共同して危害を加える目的をもつて、同年二月二五日午前九時一五分ころから同日午前九時二三分ころまでの間、右代執行対象地の一つである成田市駒井野字張ヶ沢一一一九番の九付近において、外多数の学生らとともに竹槍・竹竿等の兇器を準備して集合し

(二)、前同日午前九時二三分ころ、同所において、右任務に従事中の警察官らに対し、交々竹槍、竹竿で突きかかり、あるいは殴打する等の暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

二、被告人田村重喜は、外約二〇〇名の学生らと共謀のうえ、前同日午後二時三六分ころ、成田市駒井野字張ヶ沢一一六五番地付近のいわゆる工事用資材道路一号線西側土地上において、右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制、検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部に応援派遣された埼玉県警察本部警備部機動隊警視佐藤安秀指揮下の多数の警察官に対し、交々投石したり、あるいは竹竿で殴打したうえ被告人田村重喜においても所携の竹竿(昭和五一年押第二三〇号の五)で警察官片貝寿雄の頭部を二回殴打し、更に同直井勝重目がけて右竹竿を投げつけるなどの暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

三、被告人福井昌平、同高橋克行、同鴨哲登志、同石井重信及び同石井出は、千葉県知事による成田市駒井野字張ヶ沢一一一九番の七及び同一一一九番の九の各土地物件に対する右代執行に際し、右空港公団から同市駒井野字張ヶ沢一一六五番付近のいわゆる工事用資材道路一号線より右各代執行対象地に至る作業用道路の建設工事を受注した日本国土開発株式会社の実施する右工事を妨害し、これを阻止しようと企て、外約三〇〇名の学生らと共謀のうえ、前同日午後三時ころから同日午後四時五〇分ころまでの間、同市駒井野字張ヶ沢一一六五番付近において、右建設工事のため、同所においてD六〇型ブルドーザー二台を各々運転操作していた右会社作業員真喜屋実勝及び同土居徳義に向けて投石行為を繰り返したうえ右各ブルドーザーの前面に立ち塞がり、同人らに対し交々「帰れ。」などと怒号しつつ、更に右各ブルドーザーの前面等に腕を組んで座り込むなどして両名の作業を不能ならしめ、もつて威力を用いて右会社の業務を妨害し

四、被告人生島誠は、外約二〇名の学生らと共謀のうえ、同年三月三日午後二時二二分ころ、成田市駒井野字広田一〇〇二番の一付近において、右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部警備部機動隊警部三井善政指揮下の多数の警察官に対し、交々石塊を投げつけたり、棒で突く・殴るの行為に及んだほか、更に被告人生島においても投石行為に及んだうえ警察官春日幸雄に対し、所携の角材(昭和五二年押第一三〇号の一五)でその腹部を突いたり、あるいはその頭部を殴りつけるなどの暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

五、被告人北村充成は、外約三〇名の学生らと共謀のうえ、前同日午後三時四〇分ころ、前同所付近において右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部警備部機動隊石渡連隊傘下の三井大隊及び武道小隊各所属の多数の警察官に対し、交々石塊を投げつけたり、棒で突くなどしたうえ、被告人北村においても所携の棒で警察官田中博邦らに対し数回にわたつて殴りかかるなどの暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

六、被告人富岡昭博は、外約二〇名の学生らと共謀のうえ、前同日午後四時四〇分ころ、前同所付近において、右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部警備部機動隊石渡連隊警部三井善政指揮下の多数の警察官に対し、交々石塊を投げつけたり、竹竿で突くなどの暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

七、被告人櫻井清は、千葉県知事の行なう右代執行に際し、同知事から右代執行対象地上にある立木その他一切の物件の移転作業の委託を受けた右空港公団らの作業を実力で阻止しようと企て、外約三〇名の学生らと共謀のうえ、前同日午後三時ころから同日午後三時一四分ころまでの間、成田市駒井野字張ヶ沢一一四六番において、右移転作業に従事中の同空港公団職員及び同空港公団から右作業を請け負つた山本組こと山本金一郎の従業員らに対し、交々「公団帰れ。土地泥棒。」などと怒声を浴せつつ同人らの前に立ち塞がり、泥塊を投げつけたり竹竿などを突きつけたりしたうえ更に足蹴りするなどして同人らの右作業の遂行を不能ならしめ、もつて威力を用いて右空港公団及び右山本組こと山本金一郎らの業務を妨害し

八、被告人森田悦司、同海沼栄造及び同渡邊克夫は、千葉県知事の行なう右代執行に際し、同知事から右代執行対象地上にある立木その他一切の物件の移転作業の委託を受けた右空港公団らの作業を実力で阻止しようと企て、外多数の学生らと共謀のうえ、

(一)、右作業に従事中の同空港公団職員ら及び右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長本庄務指揮にかかる警視庁第一機動隊所属の多数の警察官らの生命・身体などに対し、共同して危害を加える目的をもつて、同年三月五日午前七時一〇分ころから同日午前九時一六分ころまで(但、被告人森田については、同日午前八時五五分ころまで)の間、成田市駒井野字張ヶ沢一一四六番において、外多数の学生らとともに、竹竿、石塊などの兇器を準備して集合し

(二)、同日午前七時一〇分ころから同日午前九時一六分ころまで(但、被告人森田については、同日午前八時五五分ころまで)の間、同所において、右移転作業に従事中の右空港公団職員及び同空港公団から作業を請け負つた山本組こと山本金一郎の従業員らに対し、同人らの再三にわたる退去要求に従わないで同所に築造された砦内に立て籠り、交々石塊、空ビンなどを投擲したうえ、同砦の周囲に築かれたバリケードの隙間から竹竿で突きかかり、更に同人らが同バリケードの丸太にロープをかけて引き倒そうとするや、このロープを外し、あるいは鉈などでこれに切りつけるなどして同人らの右作業を不能ならしめるとともに同日午前八時五〇分ころから同日午前九時一六分ころまで(但、被告人森田については、同日午前八時五五分ころまで)の間、同所において右(一)記載の任務に従事中の右警察官らに対し右同様の暴行を加え、もつて威力を用いて右空港公団及び右山本組こと山本金一郎らの業務を妨害するとともに右警察官らの職務の執行を妨害し

九、被告人下山久信及び同岡野寛は、千葉県知事の行なう右代執行に際し、同知事から右代執行対象地上にある立木その他一切の物件の移転作業の委託を受けた右空港公団らの作業を実力で阻止しようと企て、外約一八〇名の学生らと共謀のうえ、前同日午前八時三二分ころから同日午後零時二八分ころまでの間、前同所において、右作業に従事中の同空港公団職員及び同空港公団から作業を請負つた有限会社酒井興業の従業員らに対し、同人らの再三にわたる退去要求に従うことなく、被告人下山及び同岡野において同所砦内の松の木上に架設された小屋内、あるいは枝上にとどまり、交々同人らに対し石塊を投げつけたり、水を掛けたりしたうえ更に同会社代表者酒井三代三が右松の木を安全に伐採するための準備作業をすべく、同松の木に梯子をかけて右架設小屋に接近するや、同人に対し数回にわたつて竹竿を突きつけながら「登つてきたら殺してしまうぞ。火災ビンがあるんだ。」などと申し向けるなどして同人らの右作業の遂行を不能ならしめ、もつて威力を用いて右空港公団及び右会社の業務を妨害し

一〇、被告人大河内信喜は、外多数の学生らと共謀のうえ、

(一)、右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長本庄務指揮にかかる警視庁第四機動隊第二中隊所属の多数の警察官らの生命身体などに対し、共同して危害を加える目的をもつて、前同日午後零時三〇分過ころ、成田市駒井野字張ヶ沢一一八九番付近において、外多数の学生らとともに、竹竿などの兇器を準備して集合し

(二)、前同日午後零時三〇分過ころ、同所において、右任務に従事中の警察官らに対し、交々竹竿で突くなどしたうえ、被告人大河内においても右同様所携の竹竿で警察官森清に突きかかるなどの暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

一一、被告人山下茂は、前同日午後零時五二分ころ、成田市駒井野字張ヶ沢一一七五番の一付近において、右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長本庄務指揮にかかる警視庁第二機動隊第四中隊所属の警察官に対し、所携の竹竿で数回にわたつて突きかかる暴行を加えもつて右警察官の職務の執行を妨害し

一二、被告人市川裕二は、千葉県知事の行なう右代執行に際し、同知事から右代執行対象地上にある立木その他一切の物件の移転作業の委託を受けた右空港公団らの作業を実力で阻止しようと企て、外約五〇名の学生らと共謀のうえ、前同日午前七時〇五分ころから同日午前一一時二〇分ころまでの間、成田市駒井野字広田一〇〇二番の一において、右移転作業に従事中の同空港公団職員及び同空港公団から作業を請け負つた有限会社酒川興業の従業員らに対し、交々石塊などを投擲したり、竹竿で突きかかるなどしたうえ、更に同人らが同所砦の周囲に張り巡らせたバリケードの丸太にロープをかけて引き倒そうとするや、そのロープを外すなどして同人らの右作業の遂行を不能ならしめるとともに、右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長本庄務指揮にかかる開東管区機動隊堀田大隊所属の多数の警察官らに対し、交々右同様の暴行を加え、もつて威力を用いて右空港公団及び右会社らの業務を妨害するとともに、右警察官らの職務の執行を妨害し

一三、被告人奥山敬一、同相馬一洋、同清水建は、外約一五〇名の学生らと共謀のうえ、同年三月六日午前六時四〇分過ころ、成田市駒井野字張ヶ沢一一一九番の九付近において、右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長本庄務指揮にかかる警視庁第三及び第四各機動隊並びに関東管区機動隊杢谷大隊所属の多数の警察官に対し、交々竹竿や棒で突いたり叩いたりしたうえ更に投石するなどの暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

一四、被告人三田義樹、同歸山俊二、同高山道雄、同園田安男、同種石保廣及び同黒田則武は、外多数の学生らと共謀のうえ、

(一)、右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長本庄務指揮下の警視庁第三及び第四各機動隊などの多数の警察官らの生命・身体などに対し、共同して危害を加える目的をもつて、前同日午前六時過ころから同日午前七時四〇分過ころまでの間前同所付近において、外多数の学生らとともに、竹槍、竹竿、石塊などの兇器を準備して集合し

(二)、前同日午前六時四〇分過ころから同日午前七時四〇分過ころまでの間、同所において、右任務に従事中の警察官らに対し、交々竹槍・竹竿で突いたり殴打したうえ更に投石するなどの暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

一五、被告人西谷俊太郎は、外約一五〇名の学生らと共謀のうえ前同日午前七時四〇分ころ、前同所付近において、右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長本庄務指揮にかかる警視庁第三機動隊第一中隊所属の多数の警察官に対し、交々旗竿で殴打したり投石したりするなどの暴行を加え、もつて右警察官の職務の執行を妨害し

一六、被告人小沼正昭、同伊藤洋美、同菅野芳秀、同村田康秀、同北利雄、同森良、同多田和美、同川野學、同田村窿、同永田修、同安齋愼治及び同岡村庫二は、外多数の学生らと共謀のうえ、

(一)、前同日午前六時ころから同日午前九時三〇分ころまでの間、成田市駒井野字張ヶ沢一一二〇番付近において、右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部警備部機動隊石渡連隊傘下の三井大隊第一及び第二各中隊並びに武道小隊所属の多数の警察官らの生命・身体などに対し、共同して危害を加える目的をもつて、外多数の学生らとともに竹槍、竹竿、石塊などの兇器を準備して集合し

(二)、前同日午前七時五〇分ころから同日午前九時三〇分ころまでの間、同所において、右任務に従事中の警察官らに対し、交々竹槍・竹竿で突いたり、あるいは石塊を投げつけるなどの暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

一七、被告人青申一は、千葉県知事が行なう右代執行に際し、同知事から右代執行対象地上にある立木その他一切の物件の移転作業の委託を受けた右空港公団らの作業を実力で阻止しようと企て、外約四〇名の学生らと共謀のうえ、前同日午前七時ころから同日午後二時ころまでの間前同所付近において、右移転作業に従事中の同空港公団職員及び同空港公団から作業を請け負つた有限会社酒井興業の従業員らの再三にわたる退去要求に従うことなく、被告人青において同所砦内所在の松の木上に架設された小屋内にとどまり、同人らに対し石塊を投げつけ、汲みおいた糞尿を柄杓で撒き散らし、更にビニール袋入り人糞を投げつけたりしたうえ、木から降りるように説得に向つた右会社代表者酒井三代三に対し所携の竿掘棒(昭和五四年押第四九号の四八)を突きつけながら「あがつてくると殺すぞ。」などと申し向け、次いで同人が右松の木を安全に伐採するための準備作業に着手すべく再度右架設小屋に接近するや、竹の棒で突きかかるなどの暴行を加えて同人らの右作業の遂行を不能ならしめ、もつて威力を用いて右空港公団及び右会社の業務を妨害し

一八、被告人奥哲明は、外約二〇名の学生らと共謀のうえ、前同日午後一時一五分ころ、成田市駒井野字張ヶ沢一〇七二番付近において、右代執行に際し発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部長本庄務指揮にかかる関東管区機動隊杢谷大隊所属の多数の警察官に対し、交々投石するなどの暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

第五  前記空港公団が昭和四六年三月六日千葉県知事より代執行の実施された成田市駒井野字張ヶ沢一一一九番の七所在の土地の引渡しを受け、同地に立入禁止の立札を立てたり有刺鉄線を利用して柵を張りめぐらせるなどしたものの、新空港建設反対派の農民・学生らが右柵などを破壊して同地上にテント小屋を建てるなどして再び同所を占拠したうえ、同所に隣接し、空港公団所有にかかる同市駒井野字張ヶ沢一一〇七番所在の土地の一部に従前から築造されていた横穴内へ食料や鉄パイプ等を搬入して立て籠もるなどの妨害活動を継続し、新空港建設工事に支障が生じたため、右横穴及びその周辺一帯の土地について整地作業を実施することとし、同年三月二五日早朝から右横穴の掘り崩しなどの作業を開始した際、被告人梶川謙一は外二名の者と共謀のうえ、同日午後一時三〇分ころから同日午後一時三八分ころまでの間、右横穴内に立て籠もり、同所において右空港公団らの整地作業に伴ない発生が予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事中の千葉県警察本部機動隊三井大隊第一中隊所属の警察官らに対し、交々所携の鉄パイプ、ビニールパイプ、竹竿で突きかかるなどの暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

第六  被告人平野靖識は外約二〇名の学生らと共謀のうえ、昭和四六年五月七日午後二時ころ成田市駒井野三七一番地の二中野清司方前路上において、前記空港公団職員磯部亮敏(当時三〇歳)外二名を取り囲み、同人らに対し前記第四及び第五記載の代執行等の不当性などについて抗議していた際、同人と口論となり、同所において、右磯部亮敏に対し、交々その胸部、背部等を手拳で殴打し、更に足蹴りするなどの暴行を加え、よつて同人に対し加療約一〇日間を要する前胸部挫傷の傷害を負わせ

たものである。

(証拠の標目)(略)

(弁護人の主張に対する判断)

第一被告人らの個別的行為に関する主張

一、被告人平野靖識及び同加瀬勉について(判示第一の一及び二)

(一) 弁護人は、公務執行妨害罪が成立するためには当該職務の執行が適法であることを要するところ、千葉県収用委員会(以下収用委員会という)により、昭和四五年九月一日開催された本件第二回公開審理手続は、新東京国際空港公団法(以下公団法という。)に基づく公団の業務に属する収用裁決申請についてなされたものであるから、空港公団は、まず同法二四条により業務方法書を作成したうえ運輸大臣の認可(昭和四六年一二月一日認可された。)を受けてから収用裁決申請をすべきものであり、右認可なくしてなされた収用裁決申請を受理し、かつ未だ認可の下つていない時点において開催された点並びに収用裁決申請が同一事業について第一次ないし第七次に分割してなされた点において違法があるにもかかわらず、これを看過して審理を進めたこと、本件第二回公開審理について、その開催通知の漏れた土地所有者・関係人が多数いたこと、右期日指定は事前準備が不可能なうえ大多数の関係人について不都合な日であつたことなど、相当な指定でなく、その他収用委員会側に様々の手落ちがあつたこと等多くの違法不当な点が見受けられるので、収用委員による審理手続は勿論のこと、同収用委員会事務員らの会場整理等の職務の執行もまた違法・不当なものというべく、従つて、被告人らの公務執行妨害罪は認められない旨主張する。

よつて検討するに、前掲各証拠によれば、本件第二回公開審理に至るまでの経緯及び当日における審理状況等は、判示第一冒頭記載のとおりであつて、空港公団及び収用委員会の執つた措置はいずれも法所定の要件を具備する適法なものであつたことが明らかであり、また収用裁決申請に、弁護人の指摘するような瑕疵が存するとしても、これを受理した収用委員会の審理が当然に不適法であつて不成立ないし無効となるものとは解し得ず、仮に不適法な収用裁決申請がなされた場合においても、審理自体は適法に開始され得るものであり、その他、本件のすべての証拠を検討しても、結局本件収用委員会委員及び同収用委員会事務局職員の職務執行行為については適法性に欠ける点が認められないので、弁護人の主張は採用できない。

(二) 弁護人は、被告人平野及び同加瀬の行為は、収用委員会が土地所有者・関係人の都合を無視して一方的に期日を指定したうえ、公開審理当日においても、土地所有者・関係人の意見陳述も聞かず、一方的に審理打切りをしようとしたのに対し、意見陳述等の正当な権利を確保しようとして緊急かつやむなく会長及び委員の退席を押し止どめるために、なされたものであるから、正当防衛ないしは緊急避難として違法性が阻却される旨主張する。

よつて検討するに、前掲各証拠によれば、判示第一冒頭記載のとおり、収用委員らは審理会場における混乱を収拾して審理を開始すべく、その方法等を協議するため別室へ赴こうとして立ち上つたことが認められるのであつて、収用委員会としては何ら審理打切りを意図していたものではなく、また打切りを宣したわけでもなかつたことが明らかであるから、被告人らまたは土地所有者・関係人らに対する不正の侵害行為が存在しなかつたことに帰着するので、他の要件を検討するまでもなく、被告人らの各行為が正当防衛ないし緊急避難として違法性を阻却される場合に該当しないことが明らかであるうえ、仮に、被告人らにおいて、右収用委員らの行動をして審理打切りと誤信したとしても、当時の状況から判断して、緊急やむを得ない事情が存したとは言い難いので、結局この点についての弁護人の主張も採用できない。

二  被告人中野龍夫、同森本裕文、同梅澤勘一、同堀越光枝、同福井昌平、同高橋克行、同鴨哲登志、同石井重信及び同石井出について(判示第二の一ないし四及び第四の三)

弁護人は、本件空港公団による土地収用法三五条に基づく立入調査は、違法無効な事業認定処分を前提とし、かつ、抑右一(一)に述べた如く業務方法書の認可を受けていなかつた空港公団によつて実施された点において、法的根拠の欠如した重大かつ明白な瑕疵が存するといいうるのみならず、仮に何らかの法的根拠が存在したとしても、立入調査に名を籍りて、その実質は新空港建設反対派の抗議行動を誘発し、これを妨害行為として警察機動隊によつて検挙させ、以後の反対運動を鎮静化せしめることを目的としたものであり、しかもその手続も農民の生活基盤である農地について土地の強制収用を予定した立入測量を実施するに際し、一通の書面で通知したのみでこれを強行しようとしたものであつて、権利の濫用に該当する違法・不当な職務行為であつたといわなくてはならず、これに反対しその立入りを妨害する行為に出た被告人梅澤勘一及び同堀越光枝の各行為は、土地収用法三五条、一三条にいう正当理由に基づく立入阻止行為であり、かつ本件程度の実力行使は社会的にも容認され得る範囲内に留まつているから、被告人梅澤及び同堀越の本件各行為は正当行為として違法性が阻却される旨主張し、更に前記被告人中野龍夫、同森本裕文、同福井昌平、同高橋克行、同鴨哲登志、同石井重信、同石井出について威力業務妨害罪が成立するためには当該業務が刑法上保護に価する適法なものでなければならないと解すべきところ、空港公団による右立入調査並びに同空港公団の指揮、監督の下に日本国土開発株式会社をして実施せしめた本件作業用道路の建設工事に前同様の手続的瑕疵が存するのであるから、空港公団らによる右業務は違法・不当なものとして刑法上保護に価するものと言うことはできず、結局被告人中野龍夫らに対する威力業務妨害罪は成立しない旨主張する。

よつて検討するに、前掲各証拠によれば、空港公団が事業認定処分を受けるまでの経緯は判示第一の冒頭記載のとおりであるが、事業認定処分は土地収用法二〇条所定の要件が具備しているか否かについて建設大臣の裁量に委ねられた行政行為であるから、明白かつ重大な瑕疵が認められない限り、一応適法・有効なものとの推定を受けるものであるところ、弁護人主張の手続的瑕疵は前示事業認定処分のなされた経緯に鑑みて、無効と断ずる程度のものとはいい難く、また業務方法書の認可が下つていなかつた点についても、公団法二四条の立法趣旨は、空港公団が業務を遂行するに当り、その大綱を事前に明示して運輸大臣の行政上の指導・監督に資するためにこれを義務付けたに過ぎないと解されるので、同条は、空港公団が既になされた事業認定処分の趣旨に沿つて立入調査を行なうことや、代執行に際して作業用道路の建設工事を実施することまでも禁止しているものとは解し得ず、その他空港公団が被告人らに対する弾圧を意図していたことなど弁護人の主張するような権利濫用の事由も認められないから、結局弁護人の右各主張はいずれも採用できない。

三  被告人井原義輝について(判示第三)

弁護人は、本件警察官らの行為は、公安条例違反行為の規制に名を籍り、必要以上に過剰な警備体制をしき、その実質において新空港建設に反対して行なわれた被告人らによる適法な示威行進を規制・阻止しようとしたものであつて、警察官としての職務権限を著しく逸脱した違法・不当なものであるから、前同様の理由により、被告人らの公務執行妨害罪は成立しない旨主張する。

よつて検討するに、前掲各証拠によれば判示第三記載の事実が認められるところ、本件警察官らはいわゆる二・一四集会開催の趣旨や目的、千葉県知事が代執行権者であること、同集会後の示威行進が同県知事公舎付近を通過する予定であること等の事情に鑑み、従前からの新空港建設反対派らによる抗議行動の態様等に照して、同県知事に対する抗議行動のため示威行進の届出進路を無断で変更して同県知事公舎へ向かうおそれが高いものと判断し、その警戒・警備に従事していたことが窺えるうえ、右警察官らは届出のあつた示威行進の進路からは外れた公道上で、知事公舎への進入を阻止すべく待機していたことも明らかであるから、このような事情の下における本件警察官らの警戒、警備活動は何ら過剰違法なものということはできず、また本件全証拠によつても弁護人が主張するように、右警察官らが被告人らの適法な示威行進を規制・阻止しようとしていたことを疑わしめる事情を窺い得ないので、結局本件警察官らの職務行為に違法・不当の廉はなく、この点における弁護人の主張は採用できない。

四  被告人久保道典、同田村重喜、同生島誠、同北村充成、同富岡昭博、同櫻井清、同森田悦司、同海沼栄造同渡邊克夫、同下山久信、同岡野寛、同大河内信喜、同山下茂、同市川裕二、同奥山敬一、同相馬一洋、同清水建、同三田義樹、同歸山俊二、同高山道雄、同園田安男、同種石保廣、同黒田則武、同西谷俊太郎、同小沼正昭、同伊藤洋美、同菅野芳秀、同村田康秀、同北利雄、同岡村庫二、同森良、同多田和美、同川野學同田村窿、同永田修、同安齋愼治、同青申一、同奥哲明について(判示第四の一、二及び四ないし一八)

弁護人は、右被告人らについて威力業務妨害あるいは公務執行妨害罪が成立するには、当該業務が刑法上保護に価する適法なものであり、また職務の執行が適法に行われたものでなければならないものであるところ、千葉県知事による本件代執行は、(1)空港公団は公団法二四条所定の業務方法書の認可を受けていないにもかかわらず、本件代執行の申請をしたのであるから、右申請は違法であること、(2)千葉県収用委員会の違法・無効な収用裁決に基づくものであること、(3)行政代執行法二条所定の「その他不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるとき」との要件を具備せずに実施されたこと、(4)代執行を実行する前提として履行義務者に対し、代執行の戒告、代執行令書による通知をしなければならないにもかかわらず、右戒告通知は履行義務者全員に到達していたわけではなかつたこと、(5)戒告書に移転すべき物件を特定して記載されていなかつたこと、(6)履行期限が九日間という不当に短いものであつたこと等の諸点において、明白かつ重大な瑕疵が存在し、従つて無効なものであり、加えて、(7)代執行の委託を受けた空港公団らによる代執行の実行も、本来執行者でない警察機動隊や私設ガードマンらによつてなされたものであつたのみならず、抵抗する義務者らに対し実力排除の直接強制を加えた違法なものであつて、この点からも刑法上保護に価せず、それ故右違法な代執行の実行作業を補助し、現場において右作業に伴ない発生の予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事していた右警察官らの職務の執行も違法性を帯びるに至るから右両罪は成立しない旨主張し、次いで仮に右主張が認められないとしても、本件被告人らの各行為は、政府空港公団が地元農民らとの話し合いに応じることなく、警察権力を駆使して新空港建設反対派を弾圧し、もつて新空港の建設を強行しようとしたことに対し、国民に残された最後の手段である抵抗権の発現としてなされたものであるから違法性が阻却される旨主張する。

よつて判断するに、右(1)については、既に述べた公団法二四条の立法趣旨に鑑みて、事業認定処分の趣旨に含まれる行為をも禁ずるものでないと解されるところ、本件代執行申請は、事業認定処分の趣旨に沿つて空港の用地を確保しようとするものであるから適法であり、右(2)については、収用委員会は起業者と土地所有者・関係人との間の利害関係の調整を図るべく、法律上その中立性、客観性を制度的に保障されている独立の行政委員会であるから、かかる収用委員会による審理を経て得られた収用裁決に基づき代執行の請求があつた場合、県知事においても、右裁決が不存在であるとか、あるいは一見明白かつ重大な瑕疵の存在が認められるようなときを除いて、これを適法にして有効な収用裁決として取扱い、以後の手続を進行せしめることが許容されると解されるところ、前掲各証拠によれば、千葉県収用委員会における収用裁決に至るまでの経緯は、判示第一冒頭記載の昭和四五年九月一日開催の第二回公開審理以降同年一〇月二三日の第五回公開審理まで所定の手続に則つた審理を経たほか、右審理の一環として同年八月二六日には現地調査を実施するなどし、更に七回にわたる会議において慎重な審議を経たうえ同年一二月二六日収用裁決の運びとなつたものであることが明らかであつて、その過程において、若干の混乱や、一部土地所有者・関係人の意見の反映が十分でなかつた事情が窺われるものの、これらは右所有者・関係人らにおいて新空港建設に絶対反対の立場を持し、従つて右手続の進行についても極めて強硬な態度を出ていたこともその原因をなすものと認められ、本件収用裁決にはこれを無効とすべき明白かつ重大な瑕疵が存在することを疑わしめる事実は認められず、右(3)については、本件発生当時将来にわたつて予測された国の内外における航空事情並びに空港建設反対派の対応、すう勢などに加え、公益性の有無に関する判断が代執行者である千葉県知事の裁量に委ねらるれていことを併せ考えると、本件代執行が行政代執行法二条所定の要件を具備していなかつたと言うことはできず、右(4)の点については、履行義務者への通知は到達していたものと認められ、また右(5)及び(6)についても戒告書には「収用土地の上にある物件(別表記載のとおり)、その他一切の物件」と記載されていたことが認められるところ、対象物件が主として原野・山林などであつた実状などを考えれば、物件の特定としては右の記載方法で足り、履行期限についても、これが九日間であつたとしても、これをもつて必ずしも不当に短期ということはできないのでいずれも理由がなく、その経緯についても、千葉県知事は昭和四六年二月一日空港公団から土地収用法一〇二条の二に基づく本件代執行の請求を受けるや、行政代執行法二条の要件を具備するものと判断し、同月二日、同法三条に基づいて履行期限を同月一三日とする戒告書を各義務者宛送達し、次いで右履行を受けられなかつたため同月一六日、右同条に基づいて代執行令書の送達を行ない同月二二日から代執行を実施することとし、同日以降順次各代執行対象地毎に代執行開始宣言をなしてこれに着手したものであつて、手続的にも何ら瑕疵の存在が認められないのであるから、結局千葉県知事による本件代執行は適法なものであつたといい得る。

次に、右(7)については、代執行に際し履行義務者らによる抵抗があつた場合、代執行の内容である事実行為の遂行に対する抵抗を排除し、その実効性を確保するため必要最小限度の実力を行使することは、代執行に付随する当然の機能として許されると解しうるところ、判示第四記載のとおり、新空港建設反対派に属する履行義務者らにおいて、代執行対象地毎に強固な防塞を築造したうえ、その内部に兇器を準備するなどして立て籠もり、代執行を実力で妨害阻止することを呼号し、一旦代執行が実施に移されるや激しい妨害行動に出ていたのであるから、これに対して代執行対象地上の立木その他一切の物件の移転作業を遂行すべく、空港公団職員、現場作業員らにおいて、警告を発した後やむなく本件程度の実力を用いて右妨害者らを排除しようとすることは未だ履行義務者らに対し直接強制を加えたものということはできない。もつともその過程において妥当性を欠くと見られる部分の存したことも否定し得ないが、これをもつて右代執行における現場作業をして違法のものとまでいうことはできず、従つて右代執行及びその現場作業に対する違法行為の発生に備えて警戒警備中の本件警察官らの職務の執行についても、他に人員・配備・装備・活動等の諸点について何ら違法・不当の廉の認められない本件にあつては、これまた適法なものであつたというべきであり、従つて被告人らの行為をしていわゆる抵抗権の発現と解すべき余地もない。

以上の次第であるから弁護人の右主張はいずれも理由がなく、採用できない。

五  被告人梶川謙一について(判示第五)

弁護人は、空港公団らが整地作業の名目の下に実施した本件横穴の撤去作業は、何ら法的根拠に基づかないもので、違法・不当の業務であり、延いては右作業を補助し、あるいは右作業に伴ない発生の予想された違法行為の規制・検挙などの任務に従事していた本件警察官らの職務の執行も違法性を具有するに至るところ、被告人梶川謙一らの本件行為は、右警察官らによる横穴撤去という急迫不正の侵害に対し、自己あるいは新空港建設反対派の農民らの右横穴に関する占有権を防衛する目的の下に、社会的に相当とされる程度の範囲内においてなされた反撃行為であるから、正当防衛として違法性が阻却され、公務執行妨害罪は成立しない旨主張する。

よつて検討するに、前掲各証拠によれば、本件発生当時、警察官らは判示第五記載のとおり成田市駒井野字張ヶ沢一一〇七番の土地(以下本件土地という。)付近に待機し、空港公団らの実施する本件土地並びにこれに隣接し、代執行当時三地点と略称され 同所一一一九番の七の土地(以下三地点という。)等に関する整地作業に伴なつて発生が予想された違法行為に対する規制・検挙などの任務に従事していたものであるが、本件当日午前六時ころから空港公団らによつて本件横穴の掘り崩し作業が開始されるや、同横穴に坐り込みを続けていた新空港建設反対派の農民・学生らが、空港公団らの従業員らに対して鉄パイプ等で突きかかり、砂を投げつけるなどし、更に被告人梶川謙一外二名も同横穴内最奥部に立て籠もり、同日午後一時ころ作業が右付近にまで進められるや右作業員らに対し、交々所携の鉄パイプ等で突きかかるなどして空港公団らの右作業を妨害するとともに、同所付近において右任務に従事中の警察官らに対しても同様の暴行を加えたうえ、引き続き同所において、被告人梶川外二名をして威力業務妨害並びに公務執行妨害の現行犯人と判断し、その検挙活動に着手した警察官らに対し前同様の暴行を加えたことが窺えるところ、本件当日における空港公団らの整地作業は、後述のとおり右三地点に関する限り適法なものと認められ、本件土地との境界は必ずしも分明でないとしても、適法な整地作業が或る部分について存在したことは明白であり、右作業の実施に伴なつて発生しうる様々の違法行為の規制・検挙などのために警戒・警備中の本件警察官らの職務の執行は固より適法であるから、被告人梶川外二名の前示行為が公務執行妨害罪を構成することは疑う余地がなく、従つて右嫌疑ありと認めて着手された本件警察官らによる検挙活動にも違法・不当の廉はないことに帰するうえ、本件全証拠を精査するも、警察官らが、空港公団らの本件整地作業を補助し、その一担を荷つたことを疑わせる事由は窺えず、他にその人員、装備、配置状況、執行態様等いずれの点においても格別違法と目する事由も存しない。従つて被告人梶川外二名の行為が判示五のとおり公務執行妨害罪を構成することは明らかであり、弁護人の正当防衛であるとの主張は、その余につき検討するまでもなく失当であるから採用の限りではない。

第二超法規的違法性阻却事由に関する主張

弁護人は、政府及び空港公団による新空港の設置ないし建設には、当初の計画決定の段階から、千葉県収用委員会による収用裁決、右裁決に基づく千葉県知事による代執行を経て空港公団によつて強行された整地作業に至るまでの全過程において、多くの違法・不当な点が存するうえ、国際空港を新たに建設しなければならない程に緊急差迫つた事情もないにもかかわらず、開港の暁には地域住民に騒音公害等種々様々の不利益をもたらすことが必定の欠陥空港を、農民らの生活基盤である土地を剥奪までして建設すること自体極めて反人民的といえ、実質的にみても違法・不当といわざるを得ないところ、被告人らの本件各行為は、いずれも空港公団らの右違法・不当な新空港建設に反対してこれを阻止するため、あるいは右空港公団らの作業の遂行等の際、違法行為の警戒警備の名目の下に新空港建設反対派を弾圧すべく出動した警察機動隊の違法・不当な職務行為に対する抵抗として各々惹起されたものであつて、その動機・目的において正当であるのみならず、手段・方法においても未だ抵抗と目される程度・態様に留まつており、しかも総体的にみて、歴史的に形成されてきた社会倫理的秩序にも反しないものであるから、超法規的に違法性が阻却される旨主張し、被告人らにおいても右同様の陳述をするので以下この点につき判断する。

よつて按ずるに、いわゆる超法規的違法性阻却事由が認められるためには、その動機・目的が正当であることは言うに及ばず、その手段・方法も社会通念上相当とされる範囲内に留まり、法益の権衡性を充足したうえ、行為全体として社会共同生活の秩序と社会正義の理念に合致することを要すると解すべきところ、本件新空港の建設にあたつては、専門家の間においてもその立地条件等から見て果して適当であるか否かについて鋭い指摘もなされていたうえ、建設の過程において地元住民を始めとし、利害関係者をして納得せしめるに十全の努力が尽くされたか否かについて厳しい批判も存するところであつて、被告人らが新空港建設に反対する立場からこれを批難し、抗議の意思を表明しようとすること自体は云々すべき事柄ではなく、社会的に容認された相当な手段・方法によつて実行される限り、当裁判所もこれを非議するものではないが、右新空港建設、収用委員会での審理や裁決あるいは県知事による代執行等そのいずれをみても、これらに対する反対行動をその手段・程度・態様の如何を問わずに正当化しうる程の違法・不当性を有するものとは言い難いうえ、本件においては収用委員会における審理、空港公団による立入調査、県知事による代執行及びこれらに付随して発生が予想された違法行為に対処すべく出動した警察官らの職務行為のそれぞれが法令の定める手続を経て実施されていたものであつて、一見して違法・不当の行為とは言い得ないにもかかわらず、かかる職務に従事中の人々に対し判示のとおり執拗にして激しい暴行行為に及んだものであるからその手段・方法・態様において社会的相当性を逸脱しているものというべく、従つてその余の点について論ずるまでもなく、弁護人の主張に理由のないことが明らかである。

(確定裁判)

1  被告人森本裕文は、昭和四八年三月一五日東京地方裁判所で威力業務妨害、兇器準備集合の各罪により懲役一年六月(執行猶予四年)に処せられ、右裁判は昭和四八年七月七日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書謄本及び検察事務官作成の昭和五五年九月一九日付前科調書によつて認める。

2  被告人福井昌平は、(1)昭和四六年一二月一三日東京地方裁判所で兇器準備集合罪により懲役四月(執行猶予三年)に処せられ、右裁判は昭和四七年六月二一日確定し、更に(2)昭和四九年九月一七日同地方裁判所で兇器準備集合、公務執行妨害の各罪により懲役一年四月(執行猶予三年)に処せられ、右裁判は昭和四九年一〇月二日確定したものであつて、これらの事実は同被告人に対する判決書(謄本二通及び抄本一通)及び検察事務官作成の昭和五五年四月三日付前科調書によつて認める。

3  被告人高橋克行は、昭和五二年三月三一日東京高等裁判所で兇器準備結集、公務執行妨害、現住建造物等放火未遂、傷害の各罪により懲役三年六月に処せられ、右裁判は昭和五二年九月一〇日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書(謄本及び抄本各一通)及び検察事務官作成の昭和五五年八月一二日付前科調書によつて認める。

4  被告人石井重信は、昭和四五年三月三一日東京地方裁判所で兇器準備集合、建造物侵入、公務執行妨害の各罪により懲役一年一〇月に処せられ、右裁判は昭和五二年一一月三〇日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する東京地方裁判所刑事第五部の昭和四五年三月三一日付(謄本)及び東京高等裁判所第五刑事部の昭和五〇年四月二五日付(抄本)各判決書並びに最高裁判所第一小法廷の昭和五二年一一月九日付決定書抄本並びに検察事務官作成の同被告人に関する昭和五五年一月二三日付前科調書によつて認める。

5  被告人石井出は、昭和四七年五月一日東京地方裁判所で監禁罪により懲役六月(執行猶予二年)に処せられ、右裁判は昭和四七年五月一六日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書謄本及び検察事務官作成の昭和五五年三月一〇日付前科調書によつて認める。

6  被告人生島誠は、昭和四六年七月一二日東京地方裁判所で公務執行妨害罪により懲役八月(執行猶予三年)に処せられ、右裁判は昭和四六年七月二七日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書謄本及び検察事務官作成の同被告人に関する昭和五五年一月二二日付前科調書によつて認める。

7  被告人櫻井清は、昭和四六年七月一九日東京地方裁判所で公務執行妨害、兇器準備集合の各罪により懲役一年六月(執行猶予三年)に処せられ、右裁判は昭和四六年八月三日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書謄本及び検察事務官作成の昭和五五年三月二二日付前科調書によつて認める。

8  被告人下山久信は、昭和四六年九月一四日東京高等裁判所で神奈川県条例第六九号集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例違反罪により懲役三月(執行猶予三年)に処せられ、右裁判は昭和四六年九月二九日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する横浜地方裁判所第三刑事部及び東京高等裁判所第四刑事部の各判決書謄本並びに検察事務官作成の昭和五五年二月六日付前科調書によつて認める。

9  被告人市川裕二は、昭和五一年七月一日東京地方裁判所で兇器準備集合、公務執行妨害の各罪により懲役一年二月(執行猶予二年)に処せられ、右裁判は昭和五一年七月一六日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書謄本及び検察事務官作成の同被告人に関する昭和五五年一月二九日付前科調書によつて認める。

10  被告人奥山敬一は、昭和四六年一二月二五日東京地方裁判所で兇器準備集合、公務執行妨害の各罪により懲役一年二月(執行猶予三年)に処せられ、右裁判は昭和四九年一二月二八日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書(謄本及び抄本各一通)及び決定書謄本並びに検察事務官作成の昭和五五年二月二三日付前科調書によつて認める。

11  被告人三田義樹は、昭和五四年七月一六日東京地方裁判所で建造物侵入罪により懲役六月(執行猶予二年)に処せられ、右裁判は昭和五五年五月二二日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する東京地方裁判所刑事第一五部(謄本)及び東京高等裁判所第一一刑事部(抄本)の各判決書並びに検察事務官作成の昭和五五年八月一四日付前科回答書によつて認める。

12  被告人西谷俊太郎は、昭和四八年一月二五日浦和地方裁判所で強要未遂、暴行の各罪により懲役六月(執行猶予二年)に処せられ、右裁判は昭和四八年二月九日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書謄本及び検察事務官作成の昭和五五年三月一〇日前科調書によつて認める。

13  被告人小沼正昭は、昭和五一年一一月二五日東京地方裁判所で住居侵入、威力業務妨害の各罪により懲役一年(執行猶予二年)に処せられ、右裁判は昭和五一年一二月一〇日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書謄本及び検察事務官作成の同被告人に関する昭和五五年一月二九日付前科調書によつて認める。

14  被告人北利雄は、昭和五五年二月一二日東京地方裁判所で道路交通法違反、業務上過失傷害の各罪により禁錮八月(執行猶予三年)に処せられ、右裁判は昭和五五年二月二七日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書謄本及び検察事務官作成の同被告人に関する昭和五五年八月一二日付前科調書によつて認める。

15  被告人多田和美は、昭和五一年七月一五日東京地方裁判所で兇器準備集合、公務執行妨害の各罪により懲役一年二月(執行猶予三年)に処せられ、右裁判は昭和五一年七月三〇日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書謄本及び検察事務官作成の同被告人に関する昭和五五年一月二二日付前科調書によつて認める。

16  被告人青申一は、昭和五四年七月五日千葉地方裁判所で兇器準備集合、公務執行妨害の各罪により懲役一年六月(執行猶予四年)に処せられ、右裁判は昭和五四年七月二〇日確定したものであつて、この事実は同被告人に対する判決書謄本及び検察事務官作成の同被告人に関する昭和五五年一月二二日付前科調書によつて認める。

17  被告人梶川謙一は、(1)昭和五〇年八月七日東京地方裁判所で兇器準備集合、住居侵入、傷害の各罪により懲役二年(執行猶予三年)に処せられ、右裁判は昭和五〇年八月二二日確定し、更に(2)昭和五二年四月二六日同地方裁判所で兇器準備集合罪により懲役一年二月(執行猶予三年)に処せられ、右裁判は昭和五二年五月一一日確定したものであつて、これらの事実は同被告人に対する判決書謄本二通及び検察事務官作成の同被告人に関する昭和五五年一月二九日付前科調書によつて認める。

(法令の適用)

1  被告人平野靖識の判示第一の一の(一)及び(二)の各所為はそれぞれ刑法九五条一項に、判示第六の所為は同法六〇条、二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号に各該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により重い判示第六の罪の刑に同法四七条但書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人平野を懲役一年六月に処することとし、

2  被告人加瀬勉の判示第一の二の所為は刑法六〇条、九五条一項に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で被告人加瀬を懲役一年に処することとし、

3  被告人中野龍夫の判示第二の一の所為のうち往来妨害の点は刑法六〇条、一二四条一項、罰金等臨時措置法三条一項一号に、威力業務妨害の点は刑法六〇条、二三四条、二三三条、罰金等臨時措置法三条一項一号に各該当するが、右は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として重い威力業務妨害の刑で処断することとし、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で被告人中野を懲役一〇月に処することとし、

4  被告人森本裕文の判示第二の二の所為は刑法六〇条、二三四条、二三三条、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、右は前記確定裁判のあつた威力業務妨害及び兇器準備集合の各罪と刑法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第二の二の威力業務妨害罪について更に処断することとし、その所定刑期の範囲内で被告人森本を懲役一〇月に処することとし、

5  被告人梅澤勘一の判示第二の三の所為は刑法二〇八条、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するが、所定刑中罰金刑を選択し、その所定金額の範囲内で被告人梅澤を罰金一万円に処することとし、

6  被告人堀越光枝の判示第二の四の栗原和興外二名に対する所為は各被害者ごとに刑法二〇八条、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するが、右は一個の行為で三個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として最も犯情の重い栗原和興に対する暴行罪の刑で処断することとし、所定刑中罰金刑を選択し、その所定金額の範囲内で被告人堀越を罰金一万円に処することとし、

7  被告人井原義輝の判示第三の所為は刑法六〇条、九五条一項に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で被告人井原を懲役八月に処することとし、

8  被告人久保道典の判示第四の一の(一)の所為は刑法六〇条、二〇八条の二第一項、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同第四の一の(二)の所為は刑法六〇条、九五条一項に各該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により重い判示第四の一の(二)の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人久保を懲役一年六月に処することとし、

9  被告人田村重喜の判示第四の二の所為は刑法六〇条、九五条一項に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で被告人田村重喜を懲役一〇月に処することとし、

10  被告人福井昌平、同高橋克行、同鴨哲登志、同石井重信及び同石井出の判示第四の三の所為はいずれも刑法六〇条、二三四条、二三三条、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、被告人福井につき右は前記確定裁判のあつた兇器準備集合罪並びに兇器準備集合及び公務執行妨害の各罪と、被告人高橋につき右は同様兇器準備結集、公務執行妨害、現住建造物等放火未遂及び傷害の各罪と、被告人石井重信につき右は同様兇器準備集合、建造物侵入及び公務執行妨害の各罪と、被告人石井出につき右は同様監禁罪とそれぞれ刑法四五条後段の併合罪であるから、いずれも同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第四の三の各威力業務妨害罪により更に処断することとし、その各所定刑期の範囲内で被告人福井、同高橋、同鴨、同石井重信及び同石井出をそれぞれ懲役八月に処することとし、

11  被告人生島誠の判示第四の四の所為は刑法六〇条、九五条一項に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、右は前記確定裁判のあつた公務執行妨害罪と同法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第四の四の公務執行妨害罪について更に処断することとし、その所定刑期の範囲内で被告人生島を懲役一年二月に処することとし、

12  被告人北村充成の判示第四の五の所為は刑法六〇条、九五条一項に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で被告人北村を懲役一年六月に処することとし、

13  被告人富岡昭博の判示第四の六の所為は刑法六〇条、九五条一項に該当するが、所定刑中懲役刑を選択しその所定刑期の範囲内で被告人富岡を懲役一年二月に処することとし、

14  被告人櫻井清の判示第四の七の所為は刑法六〇条、二三四条、二三三条、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、右は前記確定裁判のあつた公務執行妨害及び兇器準備集合の各罪と刑法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第四の七の威力業務妨害罪について更に処断することとし、その所定刑期の範囲内で被告人櫻井を懲役一〇月に処することとし、

15  被告人森田悦司、同海沼栄造及び同渡邊克夫の判示第四の八の(一)の所為はいずれも刑法六〇条、二〇八条の二第一項、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同第四の八の(二)の所為のうち威力業務妨害の点はいずれも刑法六〇条、二三四条、二三三条、罰金等臨時措置法三条一項一号に、公務執行妨害の点はいずれも刑法六〇条、九五条一項に各該当するが、右第四の八の(二)の各所為はいずれも一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから同法五四条一項前段、一〇条によりそれぞれ一罪として重い公務執行妨害罪の刑で処断することとし、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、被告人森田ら三名につき右第四の八の(一)及び(二)の両罪はそれぞれ同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条によりいずれも重い判示第四の八の(二)の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人森田を懲役一年に、同海沼及び同渡邊をそれぞれ懲役一年六月に各処することとし、

16  被告人下山久信及び同岡野寛の判示第四の九の所為はいずれも刑法六〇条、二三四条、二三三条、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、被告人下山につき右は前記確定裁判のあつた神奈川県条例第六九号違反罪と刑法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第四の九の威力業務妨害罪について更に処断することとし、その各所定刑期の範囲内で被告人下山及び同岡野をそれぞれ懲役一年に処することとし、

17  被告人大河内信喜の判示第四の一〇の(一)の所為は刑法六〇条、二〇八条の二第一項、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同第四の一〇の(二)の所為は刑法六〇条、二三四条、二三三条、罰金等臨時措置法三条一項一号に各該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により重い判示第四の一〇の(二)の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人大河内を懲役一年二月に処することとし、

18  被告人山下茂の判示第四の一一の所為は刑法九五条一項に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で被告人山下を懲役一年二月に処することとし、

19  被告人市川裕二の判示第四の一二の所為のうち威力業務妨害の点は刑法六〇条、二三四条、二三三条、罰金等臨時措置法三条一項一号に、公務執行妨害の点は刑法六〇条、九五条一項に各該当するが、右は一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから同法五四条一項前段、一〇条により一罪として重い公務執行妨害罪の刑で処断することとし、所定刑中懲役刑を選択し、右両罪は前記確定裁判のあつた兇器準備集合及び公務執行妨害の各罪と同法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第四の一二の威力業務妨害及び公務執行妨害の各罪について更に処断することとし、その所定刑期の範囲内で被告人市川を懲役一年六月に処することとし、

20  被告人奥山敬一、同相馬一洋及び同清水建の判示第四の一三の所為はいずれも刑法六〇条、九五条一項に該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、被告人奥山につき右は前記確定裁判のあつた兇器準備集合及び公務執行妨害の各罪と同法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第四の一三の公務執行妨害罪により更に処断することとし、その各所定刑期の範囲内で被告人奥山、同相馬及び同清水をそれぞれ懲役一年二月に処することとし、

21  被告人三田義樹、同歸山俊二、同高山道雄、同園田安男、同種石保廣及び同黒田則武の判示第四の一四の(一)の所為はいずれも刑法六〇条、二〇八条の二第一項、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同第四の一四の(二)の所為はいずれも刑法六〇条、九五条一項に各該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、被告人三田につき右両罪はいずれも前記確定裁判のあつた建造物侵入罪と同法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第四の一四の(一)の兇器準備集合及び同第四の一四の(二)の公務執行妨害の各罪について更に処断することとし、被告人三田ら六名につき右両罪はそれぞれ同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条によりいずれも重い判示第四の一四の(二)の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人三田、同歸山、同高山、同園田、同種石及び同黒田をそれぞれ懲役一年二月に処することとし、

22  被告人西谷俊太郎の判示第四の一五の所為は刑法六〇条、九五条一項に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、右は前記確定裁判のあつた強要未遂及び暴行の各罪と同法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第四の一五の公務執行妨害罪について更に処断することとし、その所定刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処することとし、

23  被告人小沼正昭、同伊藤洋美、同菅野芳秀、同村田康秀、同北利雄、同森良、同多田和美、同川野學、同田村窿、同永田修、同安齋愼治及び同岡村庫二の判示第四の一六の(一)の所為はいずれも刑法六〇条、二〇八条の二第一項、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同第四の一六の(二)の所為はいずれも刑法六〇条、九五条一項に各該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、被告人小沼につき右両罪はいずれも前記確定裁判のあつた住居侵入及び威力業務妨害の各罪と、被告人北につき右両罪はいずれも同様道路交通法違反及び業務上過失傷害の各罪と、被告人多田につき右両罪はいずれも同様兇器準備集合及び公務執行妨害の各罪とそれぞれ刑法四五条後段の併合罪であるから、いずれも同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第四の一六の(一)の兇器準備集合及び同第四の一六の(二)の公務執行妨害の各罪について更に処断することとし、被告人小沼ら一二名につき右両罪はそれぞれ同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条によりいずれも重い判示第四の一六の(二)の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人小沼、同菅野、同北、同森、同川野、同永田及び同安齋をそれぞれ懲役一年六月に、被告人伊藤、同村田、同多田、同田村窿及び同岡村をそれぞれ懲役一年二月に各処することとし、

24  被告人青申一の判示第四の一七の所為は刑法六〇条、二三四条、二三三条、罰金等臨時措置法三条一項一号に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、右は前記確定裁判のあつた兇器準備集合及び公務執行妨害の各罪と刑法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第四の一七の威力業務妨害罪について更に処断することとし、その所定刑期の範囲内で被告人青を懲役一年に処することとし、

25  被告人奥哲明の判示第四の一八の所為は刑法六〇条、九五条一項に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で被告人奥を懲役一年六月に処することとし、

26  被告人梶川謙一の判示第五の所為は刑法六〇条、九五条一項に該当するが、所定刑中懲役刑を選択し、右は前記確定裁判のあつた兇器準備集合、住居侵入及び傷害の各罪並びに兇器集合罪とそれぞれ同法四五条後段の併合罪であるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示第五の公務執行妨害罪について更に処断することとし、その所定刑期の範囲内で被告人梶川を懲役一〇月に処することとし、

27  被告人高橋克行及び同石井重信に対し、いずれも刑法二一条を適用して各未決勾留日数中三〇日をそれぞれ右各刑に算入することとし、被告人梅澤勘一及び同堀越光枝につき同法一八条を適用して右各罰金を完納することができないときは、いずれも金二〇〇〇円を一日に換算した期間労役場に留置することとし、情状によりいずれも同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から、被告人平野靖識、同久保道典、同北村充成、同海沼栄造、同渡邊克夫、同市川裕二、同西谷俊太郎、同小沼正昭、同菅野芳秀、同北利雄、同森良、同川野學、同永田修、同安齋愼治及び同奥哲明につきそれぞれ四年間、被告人加瀬勉、同中野龍夫、同森本裕文、同井原義輝、同福井昌平、同鴨哲登志、同石井出、同田村重喜、同生島誠、同富岡昭博、同櫻井清、同森田悦司、同下山久信、同岡野寛、同大河内信喜、同山下茂、同奥山敬一、同相馬一洋、同清水建、同三田義樹、同歸山俊二、同高山道雄、同園田安男、同種石保廣、同黒田則武、同伊藤洋美、同村田康秀、同多田和美、同田村窿、同岡村庫二、同青申一及び同梶川謙一につきそれぞれ三年間右各刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により主文52項記載のとおりそれぞれ各被告人に負担させることとする。

(量刑の理由)

本件は、新東京国際空港の建設ないしその準備段階において、いわゆる新空港建設反対派所属の農民、学生らによつて惹起された建設予定地内の土地の強制収用をめぐる一連の不法事犯の端緒ともいいうる、昭和四六年二月から三月にかけて実施されたいわゆる第一次代執行と、これに関連する千葉県収用委員会による審理、新東京国際空港公団による土地収用に備えての立入調査及び第一次代執行後における同空港公団による整地作業の各過程において発生した兇器準備集合、公務執行妨害、威力業務妨害、暴行等の集団的暴力事犯であるが、その事案の規模・態様及び社会的影響等いずれの諸点に鑑みても本件各犯行は犯情悪質といわなければならない。固より新空港の建設に反対し、これに関する自己の意見を標榜すること自体何ら責められるべきことではなく、また、新空港の建設過程においてはその計画決定の当初から本件第一次代執行及びその後の整地作業に至るまでの間その手続、実行手段・方法などの諸点において完全に妥当であつたか否かについて若干の疑問を挾む余地が存したことは否めず、被告人らにおいてこれを批難し、これに対する反対行動に参加すること自体は憲法の保障する思想、表現の自由に属するものであるが、法治国家にあつては右行動も決して無制約なものではあり得ず、自らの意見に基づきこれを実現するため手段を選ばずに判示の如き実力行動に及ぶに至つては、現行法秩序の破壊であり、民主主義の基本ルールを蹂躙する行為としてとうてい許容されるべきものではなく、加えて犯行後今日に至るも未だ被告人らにおいて自己の行為について反省の念を表明することなく、その正当性を主張してやまない態度に終始していること、また本件各犯行も一因となつて新空港の開港が大幅に遅延するなど社会的損害ないしは影響も甚大であつたこと等の事情は、被告人らの刑責を論ずるにあつて十分考慮すべきところである。

もつとも、被告人らの本件各犯行はその大半が私利・私欲に出たものとは認められないうえ、この種事案としては、その後頻発した同種事犯と対比するとき、その態様・程度において攻撃的な反抗は少なく、防衛的なものを主とした行動であつたこと、本件犯行当時被告人らの大半が若年の学生であつて、自らの意見や反対派農民らの心情に対する共感の下に、一途に行動に走つたとみられる節も窺われること、また犯行後既に一〇年の歳月が経過し、新空港も開港の暁をみるに及び、被告人らを厳罰に処する社会的要請も相当程度低減していることなどの点も考慮し、更に被告人ら各自の個別的・具体的事情をも併せ考えたうえ、被告人らをそれぞれ主文掲記の刑に処することとする。

(被告人梶川謙一に対する各公訴事実のうち、威力業務妨害の訴因に関する判断)

被告人梶川謙一に対する本件各公訴事実中、威力業務妨害に関する公訴事実の要旨は、「被告人は、空港公団の所有地である成田市駒井野字張ヶ沢などの土地につき空港公団らの行なう新空港建設のための整地作業を実力で阻止しようと企て、外多数の者と共謀のうえ昭和四六年三月二五日午前六時過ころから同日午後一時三八分ころまでの間、同市駒井野字張ヶ沢一一〇七番の土地(以下本件土地という。)において、空港公団職員らの退去要求に応じることなく本件土地の一部に掘削した横穴内に坐り込み、更に空港公団らの作業員に対し、右横穴内から鉄パイプ、ビニールパイプ等を用いて突き上げるなどして空港公団らの右整地作業の遂行を不能ならしめ、もつて威力を用いて空港公団らの業務を妨害した。」というにあるところ、同罪が成立するためには、当該空港公団らの業務が刑法上保護に価する適法なものでなければならないと解すべきであるから以下この点について検討する。検察官は、当裁判所の昭和四九年六月四日付求釈明書(七)記載の被告人梶川に関する求釈明に対し、同月一〇日付釈明書(七)をもつて、本件整地作業は空港公団の当該土地についての所有権に基づき実施されたものである旨陳述するところ、前掲各証拠によれば、本件整地作業の対象となつた本件土地は空港公団が代執行の以前に旧地主の本田某から譲り受けて移転登記済のものであり、またこれに隣接する前記三地点の土地は収用裁決を経ていたものであつて、いずれも空港公団の所有に属することが明らかであるが、他方新空港建設反対派の農民・学生らは昭和四六年一月ころから代執行の実施を予測し、三地点に対する右代執行を妨げる意図の下に、本件土地内を掘削して奥行約一五メートルの横穴を築造し、その内部に食料や毛布あるいは竹槍、鉄パイプ等を搬入して常時同所に立て籠もり、同年二月から三月にかけて実施された三地点に対する代執行の後も尚従前同様の占拠を続けて本件当日に至つたものであることが認められ、これによれば、新空港建設反対派らはその権原の有無にかかわらず、本件土地の一部である横穴内を占拠し、事実上同所に対する占有権を取得していたとみるのが相当であり、空港公団においても本件当時すでにその間の事情は認識していたものであるから、右横穴を破壊してその占有を回復するためには、本件のように空港公団自体の手によつていわば自救的行為の一環として執行することは相当でなく、然るべき法的措置を経ることが必要であつたものと思料され、右手続を踏むことなく自己所有地であることの故をもつて実施された本件整地作業が果して刑法上保護に価する適法な空港公団らの業務であつたといい得るかについてはなお若干疑問を挾む余地があり、また本件土地の周囲に存在する三地点等の整地作業は、代執行の対象地内に存する被告人らの物を排除する行為であるから適法な業務といい得るものの、本件土地と右三地点との境界も分明でなく、結局被告人梶川らが右三地点等における整地作業を妨害したことを証明するに足る証拠はないのであつて、要するに被告人梶川謙一に対する威力業務妨害の公訴事実については本件土地に関する業務の適法性及びこれに隣接する三地点等の土地について実施された整地作業に対する妨害の事実の両点につき未だ証明がないことに帰し、無罪とすべきであるが、右の公訴事実は同被告人に対する判示第五の公務執行妨害罪と観念的競合の関係にあるものとして起訴されたものであるから、特に主文において無罪の言渡しをしない。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤暁 多田周弘 播磨俊和)

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